研究概要 |
1.生理活性物質生産海藻の組織培養 緑藻コブシミル、ミル及び褐藻マツモの多糖類は、WI-38 VA-13をはじめとする腫瘍細胞に抗腫瘍性を示す。これらの有効成分を組織培養で安定的に生産することを試みた。1992年8月に三重県浜島町で採集した緑藻コブシミル、ミル及び同年12月に北海道伊達市で採集した褐藻マツモを無菌化した。先端部の生長点をピンセットでとり、PESI培地に移し、温度15℃、明期14時間、暗期10時間の長日とし、照度は1200ルクスで培養した。ミル及びコブシミルは1周間後には細胞壁を再生し、髄糸はフラスコ中では糸状のまま生長を続けた。マツモは組織の周辺細胞がフィラメント状の細胞として生長をした。しかし3種海藻共に天然のような形態とならず糸状体のまま生長を続け、3種海藻共に2カ月後には生理活性物質の分析に十分の量が培養できた。 2.組織培養で生産された抗腫瘍性物質の活性 抗腫瘍活性の測定は、感度が高く、微量の活性成分の検出ができる細胞増殖抑制試験によりIC_<50>値で行った。海藻粉末15gに2lの蒸留水を加え、沸騰浴中で2時間抽出し濾過後、濾液をSpectra/Por M_<wco>.1,000(Spectrum社)に付して分子量1000以下の低分子量物質を除去した。透析内液を凍結乾燥した後、水溶性糖タンパク質として供試した。組織培養した海藻の水溶性糖タンパク質の収量はコブシミル2.1%、ミル2.2%、マツモ4.7%であった。いずれの海藻でも組織培養すると、天然のものより収率がやや減少した。IC_<50>値はコブシミルは30 0.8、ミルは274.9、マツモは9.1であった。3種海藻共にIC_<50>値はそれぞれ天然のものよりやや増大し、抗腫瘍活性がやや落ちた。しかしながら、マツモでは組織培養しても十分に活性のある糖タンパク質が生産された。
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