研究概要 |
緩衝液可溶性凝集素(レクチン)が検出されなかった海藻10種すべてに、その緩衝液抽出残さをプロナーゼ処理することにより初めて抽出される'プロナーゼ処理依存性'凝集素が存在することを見いだした。このうち、紅藻マクサのプロナーゼ処理抽出液より種々クロマトグラフィーを用いて2種の'プロナーゼ処理依存性'凝集素、Pro-GAA-IとIIを単離した。次に、緩衝液可浴性凝集素を含む紅藻コメノリからも同様に'プロナーゼ処理依存性'凝集素、Pro-CFA-IとIIを単離した。これら'プロナーゼ処理依存性'凝集素は、いずれも分子量約80万のペプチジルグリカンであった。いずれも90%以上を占めるグリカン部分の主要構成単糖はGalとXylで、ウロン酸、3,6-anhydro-galactoseおよび硫酸エステルの存在も認められた。ペプチド部分のアミノ酸組成はともに共通しており、Ser、GlyおよびGlxに富み、グリカンとペプチド間にXyl-Ser結合の存在が示唆された。さらに、他の緑藻および紅藻各1種から精製した'プロナーゼ処理依存性'凝集素も同様のペプチジルグリカンであった。以上の結果から、海藻には従来の緩衝液可溶性の糖蛋白質性凝集素とは抽出性と化学構造が明らかに異なる新規の凝集素群が存在することが明らかとなった。 このペプチジルグリカン性凝集素は、酵素処理したヒツジ赤血球を強く凝集し、その活性はpH3-10および高温下で安定で、asialofetuinとNaClで弱い活性阻害を受けるが、他糖類では阻害されなかった。活性所在部位を明らかにする目的で、これら凝集素を過ヨウ素酸酸化や4Mグアニジン-HCl処理および種々のプロフアーゼ、グリコシダーゼおよびスルファターゼを用いる酵素処理に付したが、活性の変化は認められなかった。各処理物のHPLCやアガロース電気泳動での検討結果から、これらペプチジルグリカンは上記処理で分解されにくい化学構造を有していると判断された。活性は酸加水分解処理によってのみ消失した。また、これらペプチジルグリカン性凝集素はマウスリンパ球に対し比較的強い濃度依存性のマイトゲン活性(ConAの約1/10の活性)を示し、その至適濃度はいずれも10ug sugar/mlであった。
|