研究概要 |
イセエビ網漁業者でアレルギー症状を呈する患者のみがアカトゲトサカの水溶性高分子画分に対して強い皮内反応を示した。そこで,水抽出物を調製し,患者の皮内反応を指標に,アレルゲンの単離,精製を試みた。すなわち,抽出物をセファアクリルS-200カラムクロマトグラフィーでゲルろ過したところ,ゲルの排除限界付近に溶出する高分子画分と分子量8-10万画分,分子量1〜2万画分の少くとも3種のアレルゲンが存在することがわかった。そこで,これまで報告の少ない高分子領域の2成分に焦点を絞って精製を進めた。高分子画分(Den n1)および分子量8-10万のDen n2画分をそれぞれMono-Qカラムを用いるFPLCで分画したところ,Den n1では2つの主成分と微量成分が得られた。この成分はいずれも30%程度の中性糖を含む糖タンパク質で,SDS-PAGEでは6万および6.6万の2本のサブユニットからなることがわかった。一方,DennはMono-Qカラムクロマトグラフィーでは4個のタンパク質ピークを示したが,SDS-PAGEではいずれも同一の成分(分子量5.3万および2.1万)よりなることを示した。また,3%程度の中性糖含量を示した。これをPVDF膜にエレクトロブロッティングしたところ,2.1万成分は全くブロッティングされないが,5.3万成分は効率よく転写された。この成分について,気相アミノ酸配列分析装置によりN末端より20数残基の配列を決定した。現在,他種天然感作源のアレルゲンの配列との比較を試みているが,とくに相同性の高い配列は含まれていないようである。 低分子および脂溶性画分の直接毒性物質についてはモルモット回腸を用いて検索を実施した。その結果,水溶性低分子画分,脂溶性画分いずれにもアセチルコリンのアゴニストおよびアンタゴニストの存在が確認された。これらについては目下,単離,精製中である。
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