1.世界の食糧需給と農産物貿易について統計的に分析した。(1)農産物貿易を穀物・高付加価値農産物・熱帯産品の3グル-プへ類型化した。(2)先進国相互間、開発途上国間との貿易競争の現局面を解明し、ガット・ウルグアイラウンドの経済的背景を分析した。(3)特に、多国籍アグリビジネス(MNC)に注目した。 2.日本のオレンジ等貿易自由化と関連するアメリカ合衆国の果樹農業の現状ーサンベルト諸州とスノ-ベルト諸州ーを解明した。(1)生食果実(フレッシュ・フル-ツ)の生産担い手は、水利システムを構築した家族農場制で、低賃金移民労働力に依存する大中規模層(200〜300エ-カ-)の家族管理経営である。(2)アグリビジネスによる日米双方向の海外投資が進展しているが、生食果実生産の推直的統合には限界がある。しかし、果実果汁の生産の局面では進展が著しい。(3)世界果実市場の中で、EC等との激しい競争にさらされ南米・NZ等の南半球諸国の追い上げが厳しい中で、アメリカの果実・果汁輸出戦略は、日本市場を重視している。 3.南米のブラジル・チリの果樹農業の現状を解明した。(1)ブラジルのオレンジ果汁産業は、大規模・粗放・低賃金の低コスト性を基礎に、バルク方式に流通革新が過半を制し、日本市場へのアクセスを強めている。(2)チリの落葉果樹産業は、外国資本と最新技術を導入し、季節の逆転する北半球市場へ、生食・IQF冷凍・加工各分野で輸出指向性を強めている。 4.日本の果樹農業の自由化対応・担い手形成として、本年度は温州みかん産地の静岡県・愛媛県を調査した。(1)静岡県三ケ日町では、担い手の中核的農業者は、土地基盤整備・優良品種への改植・果樹園機械化・高品質化技術を統合した「オ-チャ-ド・システム」の再編成をすすめ、生き残りをはかっている。(2)平成4年度は、三ケ日町調査を継続し、かつ日本なし産地の鳥取県(輸出産地)、茨城県等へも研究対象地を拡大したい。
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