1.農産物貿易における多国籍企業アグリビジネスの役割について分析した。 (1)多国籍企業論をめぐる内部化理論等の検討をふまえ、多国籍企業と各国の国益との相互利用・相互対立を分析した。 (2)多国籍アグリビジネスには、(1)穀物メジャー(2)食品加工企業(3)果樹・野菜企業などの類型がある。 (3)多国籍アグリビジネスは、食品安全基準の国際的ハーモニゼーションへも深い興味をしめしている。 2.日本に対する農産物輸出国であるアメリカ合衆国農業の農法と企業形態について分析した。農業生産の担い手は、家族経営を中心としながら、共同経営、家族企業経営(Family Corporation)、アグリビジネス企業経営(Vertical Cordination)等へ多様化している。とくに企業経営の成立条件として《市場-農法-企業形態》のシステム化構造に注目した。この論文の着眼点は、労働節約的農法、技術の標準化、雇用の給源と管理、細分化と調節化の2つの市場戦略、等である。 3.アメリカ家族経営の世代継承の問題として、パートナーシップ(Partnership)協定を分析した。パートナーシップ経営は、大型化した家族経営の「営業の持続」をはかるための各世代間の協定・共同による企業形態で、父子協定を越えるものである。経営内に所得配分のメカニズムが作用する。また、家族以外の第三者の経営参入も可能となり、家族企業経営へと再編され、過渡的な性格をもっている。 4.日本農業の国際化のひとつの選択肢として、鳥取県における日本なしの海外輸出システムを分析した。1985年以降の円高のもとでも、アメリカ等の先進国市場へ20世紀なしの輸出を可能としたのは、 (1)高品質性と高検疫基準を達成した小農的な管理集約度の増大、 (2)コスト競争力の不利を補完した農協・果実連の組織的な輸出助成金システム、 (3)海外市場での消費拡大、等である。
|