オレンジ等の貿易自由化と果樹農業の国際化に関する研究の最終年度である平成5年度は、(1)貿易自由化を促進する要因である多国籍企業アグリビジネスのグローバルな展開に関する分析(共著の刊行)、(2)貿易自由化に対する日本果樹農業の対応形態に関する類型把握(論文発表)をおこなった。 (1)多国籍企業アグリビジネスの分析については、(1)世界の農産物貿易がいかに多国籍企業によって支配し統御されているか、A.穀物メジャー、B.食品産業の多国籍企業、C.付加価値型の多国籍企業の3つの類型をしめし、その市場支配の構造と現状を解明した。(2)開発途上国とくにラテンアメリカへ展開する多国籍企業の海外直接投資の形態を、日本市場との関連をふまえながら現地調査によって解明した。(3)多国籍企業の論理を内部化理論に基づき解明しつつ、国益との相互利用および相互対立の両側面を分析した。(4)食品安全基準の国際的整合化(ハーモニゼーション)への多国籍企業等の介在が、食の安全性への脅威となることに注目した。 (2)日本の果樹農業の国際化対応の諸形態については、(1)高品質化とコストダウンとを結合する土地基盤整備を軸とする産地戦略(静岡県三ヶ日町のみかん産地)、(2)生産者主導の販売法人設立による消費者への直販システムの形成(青森県弘前市のりんご産地)、(3)農協組織による助成金制度に支えられた20世紀なしの海外輸出システムの展開(鳥取県東郷町のなし産地)の3つの事例、3つの対応形態を解明した。 以上(1)(2)および関連研究をふまえると、日本の果樹農業は、グローバルなアグリビジネス・システムとの市場競争の中で存続・発展を続けねばならず、これと対抗するため生産者の協同、公的サポートによる生産・流通のトータル・システムの構築が求められていることが解明された。
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