研究概要 |
(1)昨年に引き続き、農地改革資料集成編集委員会編『農地改革資料集成』を使い、わが国農地改革の地帯別特徴を明らかにするための作業を行った。その成果の一部を、野田「解説ノート 農地改革」(『歴史と地理』442号,1992年6月刊)として公表した。 (2)比較土地改革史の論点と方法を検討するための研究会を、月1回から2回程度の割合で実施した。とりあげた国は、中国・台湾・韓国・東ドイツ・インドおよびバングラディシュであり、研究史の整理を終えるとともに、第二次大戦後の各国土地改革について「農業経営視点」からみた評価仮説をとりまとめた。 (3)「農業経営視点」検討過程で検討素材として取り上げた坂下明彦著『中農層形成の論理と形態』(1992年、御茶の水書房刊)については、集団討議をふまえて、野田が書評をとりまとめた(『土地制度史学』に掲載予定)。なお、荒木はこれらの成果を盛り込んで、次年度中に体系的著作『日本農業経営発達史論(仮)』を刊行すベく、準備をすすめている。 (4)昨年に引き続き集中的に香川県調査に取り組み、大川町役場関連文書(旧松尾村・富田村)の収集をほぼ終了した。また郷土史家からの聴取調書を二度実施し、大きな成果を収めた。戦前期の香川県は、農民運動の激しさや強力な慣行小作権の存在、多様な商業的農業と農産加工業ならびに地場産業の存在、さらには大阪市場圏との活発な労働力移動等の諸点で顕著な特徴をもっているので収集資料は極めて多様なものとなっており、現在テーマ別に分担して整理・分析中である。 (5)旅費471,000円、謝金127,000円、消耗品2,000円の予算に対し、各々519,900円・75,600円・4440円の支出となった。香川県所在の資料類が豊富であったため旅費支出がやや多くなったが、ほぼ予定どおりの支出状況である。
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