1.本研究では、現在の土地問題の一構成要素たる、農地所有のあり方とその転換の検討に寄与するという問題意識のもとで、その出発点たる農地改革による戦後自作農的土地所有の創出過程を再吟味することを課題としてきた。分析に当たっては、国内の典型地域を選定し、その地域の農地改革過程とその実態を総合的に解明するとともに、諸外国(中国、韓国、旧東ドイツ、インド)の農地改革との比較検討をもすすめた。 2.研究の成果として、(1)戦後半世紀の農地問題の推移を踏まえた農地改革の歴史的評価の検討、(2)国内典型地域における農地改革期の特に経営をめぐる対抗論理の解明を通じた農地改革評価の具体化、(3)諸外国農地改革との比較を通じた農地改革と農地問題の日本的特質の解明、を中心にして分析し、とくに(4)農民経営視点にたった農地改革評価を提示することを試みた。その結果得られた成果は下記のとおりの内容の報告書として取り纒める。 (1)課題と方法-農家経営視点からの土地改革評価-、(2)近代土地改革と小経営-第二次世界大戦後土地改革における比較史の試み-、(3)日本地主制の地域構造と農地改革-新潟県・長野県・大阪府および香川県における比較研究-、(4)東ドイツの土地改革、(5)中国土地改革と地主制の崩懐、(6)インド・バングラディシュにおける土地改革の再検討。
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