農業水路の水理構造に関する研究については、流下方向と鉛直方向の流速を同時に測定することができる電磁流速計を使用して、変動流速の測定を行い、得られた時系列データの統計解析を行った。実験は水路中に沈水性の水生植物が存在する場合と、存在しない場合について行った。水生植物帯が存在する場合には、スペクトル密度関数の形状は、水面では0.2Hz以上の高周波数領域でその傾きが-2.2で減少し、水路底では0.15Hz以上の高周波数領域で-1.7〜-1.9で勾配が減少する。一方、水生植物帯が存在しない場合には、全ての測定点においてスペクトル密度関数の形状に変化がなく、0.1Hz以上の高周波数領域でその傾きが-1.66で減少する。また、R/S解析については、水生植物帯が存在する場合には、水路底では時間間隔が10秒から直線の傾きが変わり、その勾配は前半が0.9、後半が0.6であった。一方、水生植物帯が存在しない場合には、水路底では時間間隔10〜20秒で直線の傾きが変化し、水面では7.5秒で変化した。なお、その勾配は水路底と水面共に、前半が0.9、後半が0.6であった。さらに、自己相関係数の値と変動流速の分散値とから流下方向における乱流拡散係数を算定した。 農業水路の水質浄化に関する研究については、生物化学的酸素要求量の除去速度係数の値と硝化作用の逐次反応による反応速度恒数の値を、自然の状態の場合と水路内に礫を敷き人工的に浄化作用を促進させる場合について行った。後者の実験は模型水路内に人工砕石を敷き詰めて、汚濁水を1週間にわたり通水して、水温、pH、浮遊物質量、溶在酸素量、生物化学的酸素要求量、化学的酸素要求量、アンモニア態窒素量、亜硝酸態窒素量、硝酸態窒素量、全窒素量、燐酸イオン燐量、全燐量、吸光度を分析した。この実験より、溶存酸素量の多いことと水路内に礫を設置することが水質浄化に対して大変有効であることが得られた。
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