研究概要 |
本年度は,規模の小さい模擬斜面(斜面長45cm,幅15cm,深さ5cmの侵食ボックスで傾斜は5°)を用いて土層の粘土比を一定にしてその乾燥密度を1.3,1.4,1.5g/cm^3の3通りに変え,表面流を作用させる室内侵食実験を行った.そして,土層面上に形成される侵食溝の形状を逐次測定・観察することにより,乾燥密度の変化が異なる斜面における侵食溝の3次元的形状とリル網からの流出土砂量の時間変化を測定した.その結果,乾燥密度の変化に伴う侵食溝の生成・発達過程は,初期乾燥密度の違いにより,その形成過程が以下のような特徴を持つ『上昇型侵食』,『下降型侵食』,『複合型侵食』の3種類に分類できることが分かった. 1.『上昇型侵食』は,斜面の下端付近に侵食溝が発生し,表面水の洗掘によりさらに深い侵食溝となって斜面上方向に発達するタイプである.主として乾燥密度が1.3g/cm^3の場合に顕著に見られ,侵食の発達は速く土壌流亡量も多かった. 2.『下降型侵食』は,表面水が浸透するに伴い,土層内部の圧力の高まった空気が噴出する.この際,空気が土層面を破壊するとともに凹部を形成して下方向に拡大する.この場合の侵食の発達は緩やかで,土壌流亡量も少ない.主として乾燥密度が1.5g/cm^3の場合に顕著に見られた. 3.『複合型侵食』は,『上昇型侵食』と『下降型侵食』の両方が同時に発生するタイプである.『下降型侵食』の形成過程に沿って形成された侵食溝は,『上昇型侵食』の形成過程に沿って形成され発達した侵食溝に吸収される事が多い.主として乾燥密度が1.4g/cm^3の場合に多く発生したが,その形態は一定せず土壌流亡量にもばらつきが大きかった.
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