研究概要 |
八郎潟干拓地の低湿重粘土水田における不耕起栽培の導入効果は次のようである。 (1)省力・低コスト化 耕起・代かきの省略によって労働が軽減される。また,化石燃料の消費の抑制,省力化による低コスト稲作農業の確立,さらに,耕起・代かき期間内の労働力の競合を回避することが可能となる。 (2)地下水位の低下による地耐力と透水性の向上 根穴が破壊されずに土中に保存されているので,地下水位の低下と圃場排水の改善,また,それに伴う地耐力の向上によって管理作業とコンバインの収穫作業が容易となる。 (3)土壌管理技術の確立と暗渠排水機能の向上 イネの根の活力を利用して土壌改良など,不耕起栽培は低湿重粘土の物理性の改善を図るための有効な土壌管理技術となる。また,根穴(根成孔隙)と吸水渠を上手に連絡する施行法を考えれば,暗渠の排水機能の向上とその効果の長期化を図ることができる。 (4)低湿重粘土水田の汎用化 排水性の向上により,イネ裏作の麦や大豆などの畑作の導入に有利な土壌条件が形成されることから,輪作体系の確立に必要な圃場の汎用化が図られる可能性が高い。 (5)環境保全型農業の展開 代かき水の流出に伴う肥料の流亡や懸濁水(にごり水)の流出による水質汚染も少なく,また切りイナわらが作土層に混入しないので,発生するメタンガスの量も少なく環境保全型農業の確立が期待できる。さらに,土壌微生物を含めた土壌小動物などを活用した生態系農業の展開も期待できる。 (6)収量の安定化 不耕起水田土層は栽培期間中も根穴を通じての酸素の供給が活発で土層は酸化状態が維持されやすい。このため,イネの根が生育後半まで健全で高い活力を持つので,イネは秋まさり的生育が特長で,収量も安定している。
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