研究概要 |
本研究では農用トラクタ・タイヤの接触力学の3次元数値シミュレーション手法を開発することを目的とし,タイヤの性能予測問題,ラグ形状問題に対する計算力学アプローチの可能性を探るものである.1.平成3年度:タイヤの断面形状を基に,3次元タイヤデータ作成プログラムを作成した.一方,データ入力者によっては断面情報の準備時に誤差が発生することが欠点であり,AI手法の援用など今後の改良が望まれる.タイヤの力学モデルについては,タイヤを非圧縮弾性体と仮定し,一般化たわみチャートデータに基づく2個の弾性係数推定型モデルを完成させた.これは線型補間からなる第一段階推定と反復形有限要素法による第二段階推定の二種類のステップより構成されている.2.平成4年度:土のモデルは基本的なMohr-Coulomb弾塑性とし,非関連流れ則のもと,初期歪法による弾塑性解析とした.ペナルティ法により,3次元特殊接触要素を用いた増分型仮想仕事式から定式化し,タイヤと土の両モデルを融合した.タイヤの一部に強制変位を与える点が特徴である.3.平成5年度:接触解析精度の確認として,理論解の求められる3次元Hertz接触を対象として,三角形特殊要素と四角形特殊要素を用いた場合を検討した.その結果,いづれも同様な傾向が得られ,問題の規模により適宜使い分けることが可能と判明した.なお,解析結果は接触面中央付近でやや大となる接触圧となり,接触解析手順の改良の必要性も明らかとなった.また,ペナルティ数に関しては,接触判断が適当でない場合計算不能に陥ることがあり,更に検討を要する.なお,接触面の摩擦力は考慮していない.また,3次元接触解析は,簡単なHertz問題でも計算時間を要し,弾性と仮定した土の上のタイヤの静的沈下問題ではスーパーコンピュータを用いなければ解けない事が判明した.土のモデルのパラメータの妥当性は時間の関係で実験的に検討できず,ラグの考慮は今後の課題である.
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