本年度は、「品質基準評価関数の作成」と「多変数制御システムの設計」を目的とし、以下の知見を得た。 1.品質指標として、ビール麦種子の発芽勢率を取り上げた。初期含水率と材料温度を設定した条件下で乾燥処理した種子の発芽勢率を測定した。ただし、試料の乾燥特性曲線を求め、2槽モデルの適用性を確認し、それに基づく熱収支式から試料温度を推算し、乾燥時間により試料温度を制御する方法を用いた。 実験の結果、初期含水率が高い程、発芽勢率の熱感性が高く、試料温度を正確に制御する必要を認めた。例えば、初期含水率約50%d.b.では、試料温度40℃程度で発芽率が低下し始めた。 したがって、初期含水率が比較的高い乾燥初期ほど試料温度を精密に制御する必要があることが分かった。 重回帰分析により、初期含水率、試料温度の関数として発芽勢率を推定する品質予測式を得た。 2.循環式乾燥機を用いた実験を通じて、乾燥過程での穀物重量、入排気の温湿度、穀物層内温度、入気側及び排気側の穀物温度の変化を測定し、試料含水率を推定可能な項目を検討した。その結果、実験室レベルでは、重量による穀物含水率の精度良い推定が可能であることがわかった。さらに、重量より推算した試料含水率とその他の測定項目との相関を調ベ、穀物層出口の排気側穀温と試料含水率との間に比較的高い相関を見出した。 同箇所での穀温を測定し、含水率を推定、制御する制御システムを自己回帰モデルを用いて記述した。ただし、穀物層入口-出口間での排気側穀温の温度差も試料含水率と相関する傾向を示したが、その検討に十分な実験結果が得られなかったため、出口部の穀温による試料含水率の間接測定について、検討を継続することとした。
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