研究概要 |
本年度は「制御システムの検証および評価」を行い、以下の知見を得た。 1.計算機シミュレーションにより発生させた乾燥過程について、カルマンフィルタによる穀物水分の推定を行い、乾燥開始初期を除いて精度の良い推定が可能であることを確認した。 2.穀物の乾燥部滞留時間の制御に関して、カルマンフィルタによる乾燥部出口の穀物水分の推定を試み、滞留時間操作による出口水分の変動の推定が可能であることを明らかにした。 3.穀物の乾燥部滞留時間の制御に、偏差と微分操作量の平方和の積分値を評価関数とする速度形PIコントローラを採用し、乾燥部入口の穀物水分と入気温度のステップ状変動に対する出口穀物水分の応答を調べた。その結果、初期水分の変動に関して、乾燥空気温度30,40,50℃の場合、出口水分は各々1.0,1.5,2.0%程度,一時的に変動し影響を受けるが、全体的には出口水分は設定水分とほぼ一致した。しかし、入気温度の変動に対しては、出口水分の変動は大きく、±4%程度の変動は避けられず、温度変化に応じてゲインを調整するゲイン調整型コントローラが好ましいことがわかった。 4.穀物の間欠乾燥において、乾燥・休止時間を2槽モデルから導出されるθ_k,θ_Tとし、それに対応する乾燥部出口の穀物水分を設定値として穀物の乾燥部滞留時間を制御する方式を明らかにした。乾燥時間θ_kは品質モデルに基づいて、例えば、発芽率の維持に適した許容乾燥空気温度から決定されるが、水分低下に伴い許容乾燥空気温度が変化するので、品質モデルを組み込んだルール型適応制御システムを提案した。 今後の課題として、品質モデルの品質指標の種類とその範囲の拡大、乾燥開始初期におけるモデル同定の精度向上、更に、実際規模へのスケールアップに際しての制御システムの適用方法などの問題があり、実用化を目的とした試験研究が今後必要と考えられる。
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