穀物初期水分や乾燥空気温度の変動の影響を抑制し、品質を維持した効率的な乾燥プロセスを達成する制御方法の開発のために以下の項目について検討した。 1.乾燥プロセスのシステム同定 層内温度分布、水分分布が無視できる薄層乾燥プロセス、薄層の直列結合系を想定した厚層乾燥プロセス、更に、簡略な乾燥式を近似として用いた厚層乾燥プロセスについて、それぞれ状態空間モデルの検討を行なった。その結果、入排気の温度のみから穀物水分を推定する1入力1出力系とシステムを見做し、Kalman filterによる推定により、穀物水分の安定した推定が可能であることがわかった。 2.品質のモデリング(品質評価関数の作成) 食味との相関が認められる発芽勢・率を品質指標として用い、初期水分、穀温との関係を定式化した。これにより、乾燥の進行に伴って、発芽率を維持するための許容乾燥空気温度を明らかにした。 3.多変数制御システムの設計と評価 品質モデルに基づく乾燥空気温度の制御および2槽モデルに基づく乾燥部滞留時間の制御を行なうルール形適応制御について検討した。その結果、入排気温度、穀温等から推定される乾燥部出口での穀物水分を制御するPIフィードバック方式による滞留時間制御システムの設計・開発を行ない、初期水分や乾燥空気温度の変動に対して十分な応答が得られることを確認した。 今後、適用範囲の拡大のために他の品質指標を含む品質のモデリング、水分推定モデルの精度向上など、実用化技術への対応のための試験的研究の準備を進めている。
|