研究概要 |
本研究は、オフィスビルのような人工閉鎖環境下において、緑化を目的として導入された植物が発生する香気物質(フィトンチッド)を積極的に利用するために、その発生量と物理的環境条件、主として温度と光の影響について解析することを目的としている。 ヒノキの若苗(高さ約15cm)のものを用い、フィトンチッドのうち、多量に放出されるαピネンを計測した。光のレベルは光量子束密度にして、64,32.5μmol/m^2secの2レベルとした。またαピネンの定量にはガスクロマトグラフを用いた。αピネンの放出速度は温度の指数関数として表わされることが判明した。一般に気体の蒸発速度は、その温度における飽和蒸気圧と大気中の分圧との差に比例することから、大気中にαピネンは無いとして、その蒸発速度を計算すると、温度が1℃上昇する毎に、蒸発速度は1.06倍放出速度は1.21倍になることが明らかとなった。したがって、増加量は自然蒸発によるのではなく、植物が能動的に放出していることになる。 また光の影響に関しては、このような光レベルでは大きな変化はないものの、光強度と共に減少する傾向が明らかとなった。 放出量を増加させる温度は、通常のヒノキ苗の生育適温よりも高温(30℃以上)であるため、植物に一種の熱ストレスを与えたことに放出量の増加と考えられ、植物からの放出量だけでなく、植物の生長など、他の生理反応の解析が必要であろう。
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