本研究では、3つの知能的方法論(ファジイ理論、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム)を組合せた新しい制御法を開発し、トマトの水耕栽培における果実のカルシウム欠乏を回避する制御を試みた。 1.イオン吸収特性:根によるカルシウムイオンの吸収はカリウムイオンと同程度に多かったので、吸収促進よりも吸収後の果実への移動促進のための制御が有効と考えられた。 2.知能的同定法の開発:ファジイ理論とニューラルネットワークによる同定(モデル化)法を開発し、植物生理システム(イオン吸収や光合成など)のモデル化を行なった。イオン吸収は複雑な挙動を示したが、両手法(特にニューラルネットワークの学習により同定法)は有効であった。 3.適応制御法の開発:フィールドバック制御部(ファジイ理論を適用)とフィードフォワード制御部(ニューラルネットワークの逆システムモデルを適用)から成る適応制御法を開発した。ファジイ制御によりなめらかな制御が、また適応的なニューロ逆モデルの構築とその予測制御により応答性の良い適応制御が実現できた。 4.最適制御法の開発とそれによるカルシウム欠乏回避:ニューラルネットと遺伝的アルゴリズムを組合せた最適制御法を開発し、カルシウムイオン吸収促進及び果実への移動促進を試みた。1つは良苗にする養液濃度の最適制御である。得られた最適濃度操作は最初高く、途中かなり低く、最後かなり高くする操作であった。これにより茎の栄養生長が抑制され果実のカルシウム欠乏は回避された。他方は間欠給液制御である。光合成速度を最大にさせる給排水操作を求めたが、これによりイオン吸収が約10%ほど増大し、果実のカルシウム欠乏は生じなかった。以上より、本研究で開発した新しい知能的制御法は植物の生理学的制御に有効であると分かった。
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