本年度は熱帯産果実としてパパイヤを用い、酸素濃度、温度と呼吸量の関係を求めた。通常大気の21%O_2以下では呼吸速度は温度の上昇に比例して増加し、25℃のときには5℃の約6倍となった。しかし、2%O_2下では、20〜25℃の温度で呼吸抑制が著しく、鮮度保持効果が認められた。このような呼吸速度の結果から、ポリエチレン袋内または貯蔵容器内のCO_2、O_2濃度変化をシミュレ-トし、庫内ガス環境の調節に関する基礎資料をつくっている。 また、CO_2、O_2環境を制御するには密閉系に近い状態にする必要があるが、このような庫内では過湿によるカビ発生が問題となり、この抑制が課題である。適切な湿度環境を求めるため、塩類の飽和溶液を利用した湿度調節を4段階で行い、湿度とパパイヤ果実の鮮度保持効果について検討した。使用した塩類は、KNO_3、Kcl、Nacl、Mg(NO_3)_26H_2Oで、それぞれ相対温度95、86、75、56%に調節した。これは電気の不要な簡易ガス調節法である。その結果、30℃の気温に保った場合、湿度86%で外観が良好で、カビの発生も他の湿度下に比べ抑制され、最もよい湿度であった。一方、高湿度の95%では4個体中3個体の果梗部では水蒸気の凝結によってカビ発生が促進されたと考えられる。 そこで、果実周辺の空気を流動されることによって果実近傍の湿度を下げることを試みたところ、約3%低下し、高湿度下でカビ発生を抑制するとともに、この効果は果実表面の滅菌処理の併用で高まった。 今後は、庫内の空気流動を容易にする栽荷方法を考えるとともに、鮮度保持効果の認められる限界ガス濃度、限界温度について明らかにする必要がある。
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