熱帯産果実の多くは、呼吸量が多く、蒸散量も多いため、収穫後の鮮度の低下は著しく、損耗、腐敗による損失が多い。 果実周辺のガス組成を調節することによって、鮮度を保持するための簡易法について検討した。供試した熱帯産果実は、パパイヤ、アボカド、バナナ、マンゴ-などであった。 貯蔵中のガス組成としては、常温でも酸素濃度を1〜3%に下げることによって鮮度保持効果は認められ、果実表皮の色の変化、軟化を抑制できた。一方、二酸化炭素濃度は、5〜10%ではそれが果実に与える影響は少なかった。 このようなガス組成を維持するために、プラスチックフィルムによるMAP(Modified Atmosphere Packaging)による簡易鮮度保持法について検討した。ガス収支よりフィルムのガス透過性、フィルム面積、果実重量と、包装内ガス濃度を求め、果実の鮮度保持について実験を行い、簡易鮮度保持の可能性を確認した。問題として、エチレンガス、湿度の上昇を抑えることも必要となるが、吸着剤との併用によるガス濃度の調節は可能である。湿度が高くなると空気を流動させることによって、果実近くの微細環境を制御することも有効であり、これらの方法を合わせることで、簡易貯蔵庫、輸送コンテナなどの内部環境の調節法に有用な知見も得た。また、電子冷却装置や空気流動のための循環扇に、太陽電池を利用することで無電源地域での小型貯蔵庫が開発可能となろう。 3ヶ年のこれら実験的研究結果を取りまとめた。
|