研究概要 |
家畜の受精卵移植の際の性判別は、胚の細胞の一部を生検し、その細胞中の微量のDNAをPCR法によって増幅して調べることができるようになり、実用化の段階にある。しかし、判定に用いる雄特異的なDNA断片の塩基配列はわが国において開発されたものではなく、特許の関係で商業的利用は制限されている。最近、ヒトやマウスに存在するY染色体上の性決定領域の塩基配列の一部が明かにされ、PCR法による研究から、これらの塩基配列の一部が哺乳類で共通に保有されていることが判明している。本研究では、このDNA部分に注目し、PCR法について種々の検討を行い、家畜の雄特異的DNA断片の検出方法について研究を行った。その研究成果として、ヒトやマウスのY染色体上の短腕部に存在する性決定領域にあるconserved motif部分を増幅するプライマー(5'-CCCATGAATGCATTCATGGTGTGGT-3',5'-TTATAGTTCGGGTATTTCTCTCTGTG;SRYF,SRYR)を用い、哺乳類の雄特異的DNAを高感度に増幅するPCR法を開発した。アニーリング温度と伸長反応時間を変えた2種類の増幅反応ステップを組合せた本法では、上記のプライマーを用いて多少のミスマッチがあっても、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ラットで雄特異的DNA断片を容易に増幅することができた。雌では、非特異的なアーティファクト産物が得られ、雌のマーカーとしての利用に有効と思われた。鋳型のDNA量が40pgの量のときでさえ増幅が可能であった。
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