研究概要 |
プロラクチン(以下PRLと略す)の放出は、PRL抑制因子およびPRL放出因子(以下PRFと略す)によって調節されるが、このPRFは未だ実体が不明である。このPRFが間脳の視床下部ではなく、下垂体後葉に含まれることが、ラットで示唆されたので、屠場で牛の下垂体後葉を採取し、ー20°Cに保存したのち、トリクロル酸で抽出し,Dowex陽イオン交換樹脂に添加し,水,0.2Mピリジンあるいは2Mアンモニアで溶出した。この溶出画分で最も多くのPRF活性がみられた2Mピリジン溶出画分をBioーgel Pー4カラムに添加し,再分画を行った。ゲル濾過により得られた各画分のUV吸光度測定により,フラクション(以下Fr.と略す)32,36,41,45及び50に検出ピ-クがみられ,再度行った実験でも,溶出パタ-ンは一致した。ゲル濾過により得られた各画分は凍結乾燥され,保存された。凍結乾燥試料は再調整され,in vitroの牛の視床下部ー下垂体灌流系または下垂体前葉のみの灌流系に添加して,PRL濃度の増減により,そのPRF活性を判断した。PRL濃度はラジオイムノアッセイにより測定した。その結果次のようなことが示唆された。1.PRF活性が2Mピリジンによって最もよく溶出されたことから,この物質は弱塩基性である。2.抽出時に100°Cに熱してもPRF活性が失活しないことから,熱に強い物質である。3.Bioーgel Pー4カラムによる再分画で、最大のPRF活性は4つの分画位置に大別され,第1の活性はFr.30及び32,第2の活性はFr.36及び38(P<0.01),第3の活性はFr.44(P<0.01),第4の活性はFr.50(P<0.05)にみられた。 またFr.48には有意な抑制がみられた。4.PRF活性のピ-クはペプチドの検出ピ-クとは一致しなかった。5.下垂体後葉抽出物中には少なくとも3つのPRF活性物質が含まれ,そのうち2つは分子量1,213以下の小さい分子量をもつ。
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