研究概要 |
In vitroの潅流系で、ラットでプロラクチン(PRL)を放出するといわれるVIP、PHI、TRH、Angiotensin II、Substance P,オキシトシンおよびガラニンを牛の下垂体全葉組織に作用させたが、微弱なPRL放出効果しか認められなかった。そこで牛の下垂体後葉抽出物を用いたところ、驚くほどの著しいPRL放出が起こった。数100個の牛の下垂体後葉を屠場で集め、2モル酢酸で下垂体後葉を抽出し、イオン交換クロマトグラフィーにより段階溶出した。2モルのピリジン溶出画分を濃縮してBiagel P_4に添加し、0.5M酢酸で溶出した。各溶出画分はUV吸光度の検出によりペプチドの存在性を確認されたのち、これらを下垂体組織の潅流系に添加してPRLの放出活性を試験した。PRLの濃度はラジオイムアッセイ(RIA)により測定した。この実験の結果、LH-RH類縁物質溶出画分より低分子量の位置に2つのPRL放出因子(PRF)活性が示された。このことから、ゲル濾過により精製された下垂体後葉中には少なくとも2つのPRF様物質が含まれ、そのどちらも分子量が1,200以下であることが示唆された。第2年目には、下垂体前葉組織片の潅流によるPRL放出活性試験を下垂体前葉の分散された培養細胞にかえて、この試験を改善した。下垂体後葉は2M酢酸で抽出され、濃縮後Bio-gel P-4に添加され、0.5M酢酸で溶出して120画分を得た。ペプチドの溶出動態は波長280nmにおける吸光度測定により検出されたのち凍結乾燥された。RIAによって下垂体後葉中のPRF活性をみると、その活性は大きく3分されて溶出された。分子量マーカーとして、バシトラシン、LH-RH類縁物質およびオキシトシンを用いた。3つの活性物質のうち最大の活性を有するのは、オキシトシンより遅れて溶出された画分であった。分子量マーカーの分子量とその溶出位置から算出すると、このPRFの分子量は730であることが明かかになった。
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