家畜における染色体地図の作成は、ヒトのそれと比較して非常に遅れている。しかし、家畜育種の観点からはもちろん、繁殖、飼養などの他の学問分野の点からも染色体地図の作成は今後の重要な課題といえる。ヒトの遺伝子地図作成は、近年急速に発展してきた遺伝子工学的手法を用いることにより著しい進展を遂げている。この遺伝子の染色体上の位置を知る方法の一つにin situ hybridization法がある。本研究は、家畜染色体における遺伝子座位の決定のために、このin situ hybridization法の確立を目指すものである。平成3年度において、東北大学遺伝子実験施設より供与を受けた、染色体上の座位が既知である(No.16q22)ヒトのLCAT(レシチンコレステロ-ルアシルトランスフェラ-ゼ)遺伝子のDNAを用いて、ヒト染色体におけるin situ hybridizaーtion法を行ない、プロ-ブの放射性同位元素(トリチウム)による標識法、オ-トラジオグラフィの結界および染色体の解析法などについて習熟すると共に種々の検討点を明らかにした。すなわち、オ-トラジオグラフィにおける露出時間の設定が重要であることおよびバックとして表われる銀粒子の数を減少させるためには洗いが重要であり、その洗いの条件設定について種々の検討要件があることを知った。また、牛染色体の高精度分染法については、エチジウムブロマイド法とBrdU法を検討し、これらの方法で作製した標本をトリプシン法やASG法で処理しGーバンドを得ることにより、これまでの中期染色体より長い前中期染色体で数多くのGーバンドを観察することができた。これらの成果を基とし、平成4年度は高精度分染を施した牛染色体においてin situ hybridizationを行なう予定である。
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