平成4年度では、平成3年度に確立した牛染色体の高精度分染法をさらに改良して、G-バンドとR-バンドを同一の標本上で得ることができるBrdUヘキストギムザ法により標本作製および染色を行うことで、より精度の高い核型分析が可能となるよう検討した。次に、この方法により作製した牛染色体標本を用いて、ラジオアイソトープのトリチウムをラベルしたウシLDLレセプターDNAをプローブとして、in situ hybridization法の検討を行った。しかし、このLDLレセプターDNAは、in situ hybridizationのプローブとしては適切なものでなかったようであり、詳細な遺伝子座位の決定には至らなかった。しかし、ウシ染色体におけるin situ hybridizationは、本研究において技術的には安定したものと思われ、今後種々のウシDNAプローブを用いて遺伝子座位の実験を行う基礎を築けたものと思われる。 また、アイソトープ法によるin situ hybridizationでは反応が鋭敏である反面、実験期間が長く、バックグランドノイズが多い、間接的マッピングのためシグナルの位置が正確ではないなどの欠点があるとされている。そこで、近年ヒト染色体において盛んに用いられつつある蛍光標識プローブによるin situ hybridization、すなわちfluorescence in situ hybridization(FISH)法を家畜染色体について応用すべく実験を行った。まず、ヒト染色体において蛍光色素のビオチンで標識したY染色体DNAをプローブとしてin situ hybridizationを行うことで方法を検討し、次いで、牛染色体におけるin situ hybridizationを試みている。このFISH法は、アイソトープ法に比べて反応が弱いなど検討を要する点が残されてはいるが、家畜染色体についても応用できるものと考えており、更に実験を継続する予定である。
|