本研究は、家畜染色体における遺伝子座位の決定のために、in situ hybridization法の確立を目指すものであった。 まず、ヒトにおいて染色体上の座位が既知である(No.16q22)LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)遺伝子のDNAを用いて、ヒト染色体におけるin situ hybridization法を習熟し、次にウシLDL(低比重リポ蛋白質)レセプターDNAを用いてアイソトープ法によるin situ hybridization法を検討し、この方法の家畜染色体における確立を目指した。しかし、このLDLレセプターDNAは、in situ hybridizationのプローブとしては適切なものでなかったようであり、詳細な遺伝子座位の決定には至らなかった。 次に、アイソトープ法によるin situ hybridizationの欠点を補うとして、近年汎用されつつある、アビジン-FITCなどの化学標識物質を用い、短時間に、直接に、正確にプローブの検出を行うことができるといわれている蛍光標識プローブによるin situ hybridization、すなわち fluorescence in situ hybridization(FISH)法を家畜染色体について応用すべく実験を行った。まず、ヒト染色体標本においてセントロメア領域に散在する高頻度反復配列(αサテライト)をプローブとして用い、FISH法の一連の操作の習熟を目的とし実験を行なった。 さらに、YSニューテクノロジー研究所において作成されたトランジェニックラットの血液の分与を受け、これを材料として、導入されたマウス Whey Acidic Proteinを標識プローブとしてトランスジェニックラットの導入遺伝子座位の染色体上での決定を試み、その遺伝子座位の決定を行なうことができた。 本研究により、家畜および実験動物におけるin situ hybridization法による染色体マッピングが確立し得たものと考えられる。
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