1.平成3年度は放牧時の子牛の諸行動を調査・解析し、次年度以降の妊娠・泌乳時の行動ならびに泌乳能力との関連性を調べる基礎資料をえた。すなわち、放牧初期・中期および終了時の乳用子牛の横臥・採食・飲水行動、牛群の移動中の順位、採食順位、犬に対する接近性ならびに体重、体高など計18の諸行動を多変量解析した結果、次の新たな知見をえた。1)放牧初期の子牛の行動はその後の放牧期間中の行動とは関係がない。2)放牧後2ヶ月後からの子牛の行動は放牧終了時(放牧後約6ヶ月)の行動と関連している。3)放牧初期では牛群の移動中の順位ならびに濃厚飼料の採食順位で下位の子牛は放牧中の横臥時間が長く、体高も大であった。4)放牧中期以降の牛群の移動中の順位ならびに濃厚飼料の採食順位の上位の子牛はパドック内での昼間の乾草の採食時間も長く、体重も大であった。5)放牧中期以降の牛群の移動中の順位ならびに濃厚飼料の採食順位の下位の子牛はパドック内での夜間の乾草の乾草の採食時間が長かった。6)放牧場での犬に対する接近性ならびに飲水行動は他の行動とは関連がなかった。7)これらの結果をまとめると、放牧時の子牛の諸行動は放牧初期の子牛の鈍重性、放牧中期以降の敏捷性または鈍重性および社会的順位制によるものに分類された。 2.今後の研究展開については、本年度はこれらの子牛が種付けされ、妊娠牛として放牧されるのでとくに、前述の牛の鈍重、敏捷などの性質が妊娠牛のどのような行動に関連するかを解析し、さらに泌乳能力にどのように関連するのかが興味ある点である。
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