研究概要 |
乳牛の生涯に亘る産乳能力向上のためには、加齢および産次の進行に伴う乳腺機能の変化とその生理生化学的機構を解明する必要がある。しかしこの点に関する知見は非常に乏しい。本研究は実験動物としてマウスおよびラットを用いて乳腺上皮細胞の分化増殖能および乳汁合成分泌能と刺激因子(ホルモンおよび生理活性因子)との関連について、産次又は加齢に伴う変化を検索することを目的とする。新たに得られた成果は次のとおりである。(1)3月齢で初産させ、以降4産まで連産させたマウスで、各泌乳期の乳腺機能を比較検討し、1産泌乳は2・3産泌乳より泌乳能力が低位にあるが、乳腺実質量(DNA量)に差はなく細胞当り合成分泌機能(RNA/DNA)が低位にあること、4産泌乳では乳腺物質量が減少し全身的な機能低下に基づく泌乳能力の減退がおこることを明らかにし、乳仔の発育を指標として泌乳能力を推定する際は乳仔体重に留意する必要があることを指摘した。(2)雄マウスはいずれの月齢でも腺胞は認められず加齢とともに腺管系の発育度が低下した。雌は加齢とともに乳管系の発育度が優れ、エストラヂオールとプロゲステロン投与は乳管系より腺胞系の発育が促進し、その反応は老齢の方が大きかった。血中プロラクチン濃度も上昇することから、加齢とともに内因性の卵巣ホルモンが乳腺の感受性を高く保持するものと推論した。(3)雄ラットで、若齢老齢と上記ホルモン投与に対する下垂体プロラクチンの分子量の変化を調べ、若齢では分子量の小さい(約23000,little)もののみであり、老齢では分子量の大きい(約50000,big)ものが認められ、ホルモン投与によりプロラクチンが増加するが、若齢ではlittleが大きく3つに分れ、老齢でも分子量の変異が多くなることを認めた。
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