研究課題/領域番号 |
03660284
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
前田 芳實 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (50041661)
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研究分担者 |
橋口 勉 鹿児島大学, 農学部, 教授 (80041614)
岡本 新 鹿児島大学, 農学部, 助手 (70158814)
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キーワード | カルパイン / カルパスタチン / 蛋白質代謝回転 / 筋肉蛋白質 / 代謝適応 |
研究概要 |
筋肉蛋白質代謝回転速度について遺伝子発現の観点から考察すると、筋肉蛋白質の合成系と分解系の2つの側面から考えなければならない。筋肉蛋白質の合成速度は筋肉繊維蛋白質の遺伝子発現の問題であり、一方、筋肉蛋白質の分解速度は筋肉細胞内のプロテア-ゼ活性の変化ならびにそれらの酵素群に関する遺伝子発現の問題である。本研究では、筋肉蛋白質代謝回転速度について分解の側面から、分子遺伝学的解析を試みる目的で、筋肉中のカルパイン活性ならびにカルパスタチン活性の制御ならびに、それらの遺伝子発現について分析を行なった。材料には、体重の大小の2方向へ、60世代に渡って選抜されたウズラの系統(LL,RRおよびSS系統)ならびに鶏を用いた。筋肉蛋白質の代謝回転速度の測定は3ーメチルヒスチジン法を用いた。筋肉組織中のカルパインおよびカルパイン活性値はDEAEカラムクロマトグラフィ-で分画後、カゼインを基質として測定した。 筋肉蛋白質の分解速度には系統間差が見られ、SS>RR>LLの順に大きかった。筋肉蛋白質の分解に関与していると思われるカルパイン活性値を見ると、幼若期および成熟期のいずれにおいてもSS>RR>LLの順に高かった。一方、カルパインのインンヒビタ-である、カルパスタチンの活性値は逆に、LL>RR>SSの順に高かった。RR系統のカルパイン活性値を100とした時のLL系統およびSS系統の相対的活性比は60ー64%および123ー154%であり、また、カルパスタチン活性値の場合は130%および65%であった。また、カルパインのcDNAにより筋肉組織内のカルパイン遺伝子の発現量を測定した結果、カルパイン活性値の高いSS系統は他の系統に比較して、mーRNAの発現量が多いことが判明した。このように選抜の方向によって、筋肉蛋白質の代謝に変化が生じることは、それぞれの系統で改良目標に適応する代謝システムが確立されてきたことを示すものである。
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