研究概要 |
ニワトリ胚子生殖腺における始原生殖細胞(PGCs)の分化および生殖腺組織とPGCsの培養系の確立について、以下の結果をえた。 1. 卵割期および胚盤胞期の細胞のレクチン結合パターンの変化によって示される糖鎖構造の動態を、ABC法によって検討した。卵割初期では全割球の細胞質がGSIIに陽性反応を示し、中間層の細胞質のみが特異的にBPAと反応した。この反応は卵割中期には消失した。放卵後の胚盤葉期では、明域の胚盤葉細胞にのみ陽性反応が認められた。これらの結果は、ニワトリ初期胚においても両生類割球に類似した細胞質成分の局在性の存在することを示すものであるが、このレクチン結合パターンの差異が性形質の動態を示すかどうかは、なお不明である。 2. 生殖腺組織の培養系を確立するため、孵卵6日齢の未分化生殖腺を、10%ウシ胎仔血清(FCS),1%グルタミン-ペニシリン-ストレプトマイシン 119培地で2〜13日間培養した。雄性生殖腺は正常胚と同じように性分化したが、雌性生殖腺には、性索、白膜および皮質・髄質の分化は認められず、生殖細胞はコロニーを形成し、卵精巣様構造に分化した。また、雄性生殖腺の分化は、FCSを含まぬ培地でよりよく進行することが明らかにされた。以上のことから培養条件下で、雄性生殖腺は自律能にしたがって、遺伝的性分化を発現するが、雌性生殖腺の性分化には、FCSに含まれるエストロジェンなど外的要因(Erickson,1974)を考慮する必要があり、現在なお検討中である。 3. 始原生殖細胞の培養系については、熊本大学医学部解剖学第1講座の指導をえて、孵卵2日齢の初期胚子血流から移動期の始原生殖細胞を単離し、その培養系の確立と単離細胞群を免疫原とする単クローン抗体の作製を現在試みている。
|