ラクトフェリンは分子量が約8万の金属結合性の糖タンパク質であり、乳汁に主に含まれるが、血液中にも好中球から分泌されて存在している。その機能は非常に多岐に渡り、多機能性タンパク質と呼ばれるにふさわしいものと考えられる。これらの機能は、例えば鉄などの金属イオンなどの小さな分子から各種の細胞表面までの各種の物質との相互作用がその主要なファクターである。さらにこれら種々の相互作用がラクトフェリン分子を構成している大きさのほぼ等しい二つのlobe(C-lobeとN-lobe)に存在する特定の部位がそれぞれ機能を分担しあっているものと考えられる。本研究計画の前半においてはラクトフェリンについてトリプシンによる限定分解を行い、各種のクロマトグラフィー操作によって得られたフラグメントのN-末端およびC-末端のアミノ酸の部分配列を決定した。その結果、分子量が43-kDaの半分子すなわちC-lobeの分離に成功したことが判明した。 計画の最終年度に当たる本年度は、ラクトフェリンおよびその各種フラグメントの生物活性測定のモデルの作成を目標とした。そのための指標として、ウシ単球やマウス脾臓およびマウス胎児線維芽細胞で培養したTripanosoma cruziに対する結合実験法を確立した。
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