研究概要 |
ラクトフォリン(LP)は、乳脂肪球膜の構成タンパク質のうちの可溶性糖タンパク質の抗体と反応し、かつホエーのプロテオースペプトンのコンポネント-3画分の主要な糖タンパク質である。LPは疎水性アミノ酸残基に富むのみならず、親水性で粒子間凝集を妨げる糖鎖を持つなどの顕著な両親媒性の特性を示すことから、本研究では、LPの乳化機能およびリポプロティンリパーゼ(LPL)の作用からコア脂質のリポリシスを防御することの機能を明らかにする。 I.乳化機能 乳化能の評価は、一定条件下で、乳化に重要な要因を変えてLPと乳脂肪から調製したエマルションの乳化活性、乳化安定性、粘度、粒子径、比表面積等の乳化特性を測定することによって行った。 1)LPは短い乳化時間で高い乳化能を示した。2)LP濃度は、乳脂肪1g当りわずか10mgでも高い乳化特性を示したが、濃度が増加しても顕著な粘度の上昇は見られなかった。3)LPは乳脂肪濃度10〜50%の範囲で高い乳化能力を示した。4)pH4以外のpH域で高い乳化活性を示すが、pH7以上のアルカリ側で安定な乳化特性を示した。しかし、LPの等電点であるpH4での乳化安定性は非常に低く、粘度も高い値を示した。5)pH7において調製したエマルションでは、LPの28kDaペプチドが脂肪球表面に主に吸着され、pH3,4及び9で調製したものでは28と18kDaの両方のペプチドが吸着されていた。 II.リポプロテインリパーゼの阻害 本研究では、牛乳に本来含まれているLPLが作用しやすいように乳脂肪球を超音波処理により部分的に破壊しておいた。1)新鮮乳は乳中のLPLによって加水分解されにくいが、新鮮乳にNaClを加えたものを超音波処することにより、脂肪酸の遊離は直線的に増大した。2)プロテオースペプトン画分のうち、ラクトフォリンに富むコンポネント_-3が最も高い阻害効果を示した。3)新鮮乳_+NaCl_+超音波処理乳にLPに富む画分を加えて45分間反応させた試料でのLPLの阻害効果は、LPに富む画分の濃度の増加と共に上昇し、40mg/mlで約30%の阻害効果を示し、また反応時間の延長と共に上昇した。4)更にLPに富む画分をゲル濾過で分画した4画分のうち、LPLに対する阻害効果は、LPから成るFr.3が反応60分で86%の阻害率を示した。LPの濃度による阻害率は、40mg/ml以上では大きな差異は認められなかった。5)LPは牛乳のリポリシスを防御する機能をもつことを明らかにした。
|