研究概要 |
本年度は、雌ラットにおける甲状腺機能を調べる目的で、甲状腺刺激ホルモン(TSH),チロシン(T4)及びトリヨ-ドチロニン(T3)のラジオイムノアッセイ(RIA)法を設定し、発情周期、妊娠期及び泌乳期中のラットの血中濃度を測定した。泌乳ラットでは吸乳刺激との関連性を検討した。 1.発情周期中の血中TSH,T3及びT4濃度 血中TSH濃度は、0.5〜1.5ng/mlの間で変動したが一定の日内変動は認められなかった。T4濃度も1.5〜3.5ng/mlの間で変動したが一定の日内変動は認められなかった。 2.妊娠期間中の血中TSH,T3及びT4濃度 妊娠5,10,15及び20日における上記3種類に血中ホルモン濃度を測定した結果、血中TSHは昼に高く、夜に低い明らかな日内変動を示した。また、血中TSHの基底レベルは、妊娠期が進むに従ってゆるやかに上昇した。一方,血中T3とT4濃度は,逆に減少し,妊娠20日には妊娠0日の1/4の値にまで減少する事実を明らかにした。 3.泌乳期間中の血中TSH,T3及びT4濃度 血中TSH濃度は、泌乳前半期に近く,中期には上昇し、再び泌乳後半期に低下する変動を示した。血中T3とT4濃度は、泌乳前半期に接娠期に比べてわずかに上昇したが、泌乳全期間を通じて発情周期中のレベルよりも低値で経過した。しかしながら、乳子を除去すると血中T3及びT4濃度は速やかに上昇した。また、哺乳乳子数を2匹に減少すると血中T3及びT4濃度は,8匹の乳子を哺育する母ラットよりも高い値を示した。 以上の結果から、ラットでは妊娠及び泌乳期間中には血中T3及びT4濃度が著しく低下する事実を明らかにした。また、泌乳ラットでは吸乳剰激の強さにより血中T3とT4濃度が変化する事実を明らかにした。
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