研究概要 |
本年度は,主として,次の2つの項目について研究した。 1)副腎皮質機能と性腺機能:山羊にて作製した抗コルチコステロン血清(ACS)を泌乳ラットに静脈注射して,内因性コルチコステロン(C)を中和した場合に,下垂体性性腺刺激ホルモンである黄体形成ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH),プロラクチン(PRL)並びに卵巣ホルモンであるプロゲステロン(P)とインヒビン(INH)がどのように変化するかについて調べた。その結果,ACS投与群では,血中LH,FSH及びINH濃度が低下したが,PRL及びP濃度には変化が認められなかった。また,ACS投与群では,卵巣での卵胞発育が抑制されている事実が判明した。 これらの事実から,泌乳ラットでは,Cが副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン分泌を介して,LH放出ホルモンの分泌調節に重要な役割を演じているものと推察された。 2)甲状腺機能と副腎機能の関連:成熟雄ラットに,メチルチオウラシル(MTU)を飲水投与し,甲状腺機能を抑制した場合の下垂体及び副腎皮質機能について調べた。MTUを投与後2週間を経過すると,血中チロキシン及びトリヨードチロニン濃度は,著しく低下し,逆に,甲状腺刺激ホルモンは著しく上昇した。血中LH,FSH,テストステロン濃度は対照群と比較して差は認められなかったが,血中C濃度が有意に低下した。次に,このような低甲状腺機能のラットに,拘束ストレスを負荷すると,甲状腺機能が正常な対照群のラットに比べて,ストレス時に副腎皮質から放出される血中C濃度が有意に低下する事実が判明した。 以上の結果から,実験的に甲状腺機能を低下させると,これに連動して,副腎皮質機能が低下する事実が明らかとなった。なお,甲状腺機能の低下が,どのようにして副腎機能低下を誘起するのかについてのメカニズムについては,来年度の課題として残された。
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