研究概要 |
本研究の研究初年度の評価にあたって以下の2点が明らかになった。第1点は、上皮・間充織複合器官の器官形成機構に解明するための実験モデルとしてウシ胎仔の第一胃乳頭部および口蓋ヒダ部の標本の使用が有効であることが示された。すなわち、これまでに検索を行ってきた第一胃乳頭の形成過程に加えて本研究では口蓋ヒダの成渦過程における基本的な形態形成機序とそれぞれの器官の形態形成過程中の細胞外基質分子や細胞内骨該分子および間充織中の局所的なイオン環境を制御していると考えられる酵素(炭酸脱水酵素アイソザイムIII)の空間的および時間的発現分布の変化が明らかになった(第一胃乳頭の器官形成;H.Amasaki et al.,Acta Anat.,1991;140:169ー174,口蓋ヒダの器官形成;H.Amasaki et al.,・.Ved.Sci.,1991;53(6):1031ー1036)。とくに口蓋ヒダは、発生中に2段階の過程を経て形成され、特異的なプロテオグリカンが、上皮細胞の増殖および移動に影響を与えている可能性が明らかになった(H.Amaski et al.,Comp.Physio.Biochem.,1991;8:188,M.Takanosu et al.,Comp.Physio.Biochem.,1991;8:135,S.Matsumoto et al.,投稿準備中)。また、前述の細胞外基質分子の変化に対応するインテグリン分子および細胞内骨格分子であるアクチンフィラメントに関する結果は、現在まだ満足できる状態でないため、さらに解析を行っている。しかし、中間径フィラメントであるサイトケラチン分子に関しては、第一胃上皮の分化過程に対応していることが認められた(M.Taknosu et al.,投稿準備中)。一方、結果の第2点として前述のプロテイオダリカンに関連して、PNAレクチンを検索したところ器官形成に関連すると思われる新たな分子の存在の可能性を示す知見が得られ、さらに平成4年度の実験で同分子の抽出、精製と出来れば生化学的な性質などを明らかにする予定である。
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