研究概要 |
平成4年度は,研究計画に従って血清アミロイドA蛋白(SAA)およびα_2‐マクログロビン(α_2MG)について検討するとともに,これまで明らかにした他の急性相蛋白を含めて,炎症性疾患のウマの急性相蛋白測定の意義を総合評価した。 ウマSAAの血中濃度の正常値を初めて明らかにしたが,年齢に伴い漸増する点ではヒトと同じであった.周産期におけるSAA濃度変動は,分娩直後に一過性に急増し,分娩の炎症としての側面を反映していると考えられた.炎症性疾患馬のSAA濃度は,炎症初期に著増し,炎症の消退にともなって速やかに減少することから,SAA濃度の変動は炎症作用のみに影響されており,炎症マーカーとしての有用性を示した. ウマα_2MGは分子量約708千の糖蛋白でヒトのそれと共通抗原を有していた。正常馬血清中のα_2MG濃度の加齢性および周産期変動を明らかにし,次いで実験的炎症作出馬および炎症性各種症例馬血清中のα_2MG濃度を測定したが,α_2MGはウマにおいては急性相蛋白とは判定されなかった。 これまで明らかにしたウマの急性相蛋白,C-反応性蛋白(CRP),セルロプラスミン(CP),α_1‐酸性糖蛋白(α_1AG),酸可溶性蛋白(ASP),ハプトグロビン(HG),および先のSAAとα_2MGについて総合的に比較すると,炎症に対する反応性が最も速い蛋白はSAAで処置後2日目には処置前値の数十倍から数百倍にも上昇する.次はα_1AGとCRPで,HGは処置後4,5日目に,ASPは処置後5日目に上昇を示した.CPは処置後6〜7日目上昇を示した.また,SAAとCRPはその血中濃度が良く相関したが,前者が特に鋭敏であった。SAAの増幅度合はCRPのそれより明らかに大きく,より鋭敏な指標としての活用が期待される.
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