研究概要 |
脳・腸管ペプチドの局所ホルモン的作用を解析するにあたり,3ケ所の臓器(組織)を選び,そこに特徴的なペプチドの存在様式を明らかにした。 1.胃体部粘膜には,大量のGRP(ガストリン放出ペプチド)含有神経が存在し,粘膜固有層中に広がる密な神経網を形成していた。GRP神経は同時にアセチルコリンエステラ-ゼ活性も陽性であったので,アセチルコリンとの共存が示唆された。この領域にはアドレナリン作動性神経はほとんど存在せず,GRP含有コリン作動性神経を主とする特異な神経支配が存在することがわかった。 2.尿道の粘膜上皮は,神経と内分泌細胞に富んでいる。神経では,CGRP含有神経が,内分泌細胞ではセロトニン含有細胞が圧倒的に多かった。尿道の膜片標本をつくることに成功し,神経と内分泌細胞を免疫組織化学により染色した。これによって,神経や内分泌細胞の分布,両者の位置関係,神経終末の全体像を容易にみることができた。 3.気管粘膜には大量のCGRP含有神経が存在する。酵素処理により,気管粘膜をはがし膜片標本をつくる方法を考案した。これにより上皮内に発達するCGRP神経の分布や終末形態を明らかにした。また,気管粘膜に多い肥満細胞や特殊な白血球globule leacocytesと神経との関係を容易に観察することができた。 今後は以上の3つの組織で,脳腸ペプチドを局所的にかつ持続的に投与して,神経や内分泌細胞,上皮細胞や自由細胞の変化を解析する。
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