1.局所ホルモン作用についての生理実験 下痢に関係する生理活性物質としては、セロトニンとVIPが重要な役割を担うと想像される。前者は消化管内分泌細胞(EC細胞)に、後者は粘膜内に密に分布する神経に含まれる。両者はシナプス様の接触はしないが、密接な位置関係にある。イヌに十二指腸を使った実験で、セロトニン、VIPともに腸の分泌を引き起こしたが、VIPによる分泌はセロトニンを前投与しておくと飛躍的に増加した。セロトニンが腸のVIPを放出させるという事実とあわせて考えると、内分泌細胞から分泌されたセロトニンが近傍のVIP神経に局所ホルモンとして作用し、さらに強力な腸分泌を起こすVIPの放出を招く結果、下痢が起こると理解された。 2.浸透圧ポンプによる脳腸ペプチドの局所投与 脳腸ペプチドによる局所ホルモン作用を形態学的に解析するために、投与方法を検討した。当初考えていたペレットは、投与の量や時間の調節が不可能であり、浸透圧ポンプによる投与が有効であることがわかった。上記1の成果を踏まえ、胃体部にGRP、尿道と気道にCGRPやsubstance Pを1-2週間投与した。CGRPとsubstance Pは、気道でリンパ球などの白血球や肥満細胞を増加させ、これらのペプチドが免疫系細胞に及ぼす効果が形態学的に証明できたが、詳細な検討は現在進行中である。
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