研究概要 |
従来より行なわれてきた固定・脱水・包埋などの電顕試料作製法では、超微形態学的修飾は避けることができなかった。そこで生体内の微細構造をより良く反映している所見が得られると考えられる急速凍結・ディ-プエッチング法により赤血球膜細胞質側を直接観察する方法を開発した。1.グルタ-ルアルデヒドとアミノプロピルトリエトキシシランを被覆した2枚のカバ-グラス間で赤血球をサンドイッチにした後に、位相差顕微鏡でカバ-グラスをピンセットで軽く圧迫して、上下の赤血球膜を各々のカバ-グラスに付着させた。さらに緩衝液中に浸漬させると、毛細管現象により緩衝液が2枚のカバ-グラス間に入り、赤血球を機械的に二分割することができた。これにより赤血球膜に界面活性剤等で小孔をあけることなくヘモグロビンなどの可溶性蛋白質を除きin situのままで細胞膜を検索することができるようになった。2.さらに、カバ-グラスに付着したinsideーoutの赤血球膜細胞質側を電顕観察するために、イソペンタン・プロパン混合液(-193C)使用急速凍結装置を自作し急速凍結後、クリ-ンな高真空が得られるタ-ボ分子ポンプ装着凍結試料処理装置内でレプリカ膜を作成して、従来よりも高解像力で三次元的に解析することができた。3.またレプリカ膜回収時に、コロジオ溶液を塗布し乾燥させた後赤血球を漂白剤で溶かすことにより,直径5mm大のレプリカ膜を作製することが可能であった。4.2分割された赤血球膜のレプリカ膜を作製することにより、スペクトリン網状構造の存在などの赤血球裏打ち構造の超微形態学的特徴を明らかにすることができた。今後はこの新しい研究方法により、さらに赤血球膜裏打ち構造の分子レベルの解析が可能であると考えられる。
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