研究概要 |
平成3年度は、安定して赤血球膜細胞質側を観察する急速凍結・ディープエッチング法を開発し、平成4年度は、その方法と免疫細胞化学的方法を併用して膜骨格蛋白質の局在を明らかにした。本年度(平成5年度)は、鳥類(ニワトリ)や両生類(カエル)などの有核赤血球膜細胞質側を同様の方法で観察し、系統発生学的検討を行なった。(1)実験動物赤血球をヘパリン処理し、遠沈分離して赤血球ペレットを作成した。(2)赤血球内可溶性蛋白質除去法:細胞質内電解質組成緩衝液中にてグルタールアルデヒドとアノプロピルトリエトキシシランを被覆した2枚のカバーグラス間で赤血球ではさみ二分割した。(3)0.25%のグルタルアルデヒドで後固定した。氷晶形成防止のため10%メタノール水に浸けた。(4)次いで液体窒素で冷却たイソペンタン・プロパン混合液(-193℃)中あるいは純銅圧着法で急速凍結した。一部の試料は液体窒素で凍結割断を加えた。(5)ターボ分子ポンプ装備エイコー社製FD-3AS装置内(-95℃,2-6X10^<-7> Torr)15〜30分間ディープエッチング(氷の昇華)をかけた。(6)白金(角度24゚)と炭素(角度90゚)を回転着して、型のごとくレプリカ膜を作製した。(7)レプリカ膜を装置より取り出し速やかにコロジオン塗布、乾燥後赤血球をハイター中で溶解し、レプリカ膜をグリッドに載せた。(8)さらにコロジオンをアミルセテートで溶かした。(9)レプリカ膜を透過型電顕で観察し、ステレオ写真を撮り、三次元的解析を行なった。これにより、ニワトリとカエルの赤血球膜細胞質側の膜骨格構造を明らかにすることができた。両者の膜骨格には微小管とアクチン細線維が結合して観察された。また哺乳類赤血球でみられたスペクトリン蛋白の局在も確認された。以上より鳥類や両生類では赤血球形態維持にスペクトリン以外の細胞骨格の関与が考えられた。
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