1.マウス胎仔の胃及び結腸粘膜を電子顕微鏡観察し、単層上皮で覆われた平担な粘膜から胃小窩・胃腺や腸陰窩のような管状陥凹がどのようにして形成されるかを明らかにし、、小腸における絨毛原基の発生と比較検討することにより、両者には共通の機構のあることがわかった。すなわち(1)隣接した上皮細胞間に二次連結複合体が形成され、近くの細胞質内には細胞内腔や小胞が出現する、(2)細胞内腔や小胞が二次連結複合体の閉鎖斑に開口することにより、閉鎖帯で囲まれた上皮内腔ができる、(3)上皮内腔に面する新しい細胞頂部に垂直に細胞が分裂すること及び二次連結複合体同士、続いて上皮内腔同士が癒合することにより上皮内腔が拡大する、(4)上皮波腔の拡大及び上皮内腔と胃腸内腔の癒合がある程度進んでから、間葉組織が進入し、管状陥凹(胃腺・腸陰窩)や突起(絨毛)が形成される。このことは二次連結複合体の形成部位が上皮内腔の形成部位を、その進長方向が上皮波腔の癒合・伸長の方向を現定し、陥凹形成か突起形成かが決定されることを示唆する。 2、胃の表層粘液細胞間のギャップ結合は、個体発生学的にも、細胞更新過程においても、細胞の分化・成熟とともに発達する。一方、小腸上皮のギャップ結合は、個体発生学的には吸収上皮細胞の分化とともに発達し、成熟動物においては細胞分裂と分化の起る腸陰窩で発達している。しかし成熟した吸収上皮細胞間にはギャップ合成はほとんど見つからない。これらのことはギャップ結合が胃腸粘膜上皮細胞の分裂、分化及び機能に携わっているものの、その関与の仕方は細胞型により異なることを示唆している。 3、十二指腸腺の粘液形成におけるOーグリコシル化をレクチン細胞化学で観察し、蛋白との結合糖、骨格となる糖及び終末糖は、各々、ゴルジ装置のシス側、中間及びトランナ側で結合されることを明らかにした。
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