研究課題/領域番号 |
03670015
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
馬渕 良生 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (80106228)
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研究分担者 |
金井 美晴 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (70094365)
堀田 康明 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (90117854)
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キーワード | 脂質貯蔵細胞 / Lipid-storing cell / 膵臓 / 電子顕徴鏡 / 塩化亜鉛 / 塩化アルミニウム / 生体防御系 |
研究概要 |
われわれはこれまで、動物にある種の毒物を投与した場合の膵臓間質結合組織内に、少数個の脂質滴を保有した細胞、いわゆる「脂質貯蔵細胞」が出現することを発見し、その細胞の形態と機能について報告してきた。本年はマウスに塩化亜鉛を投与して、膵臓内・外分泌部の変化と共に、この「脂質貯蔵細胞」の動態についても観察した。 DDY系雄性マウスに、塩化亜鉛(30mg/Kg体重)を蒸留水に溶解して腹腔内に投与した。動物は1および4週間後に断頭・屠殺し、膵組織を速やかに採取した。組織は型の如く固定、脱水、包埋し、超薄切片を作製、電子染色を施した後、透過電子顕微鏡で観察した。 塩化亜鉛を投与したマウス膵臓の内・外分泌細胞は亜鉛によって細胞障害を受け、細胞の機能が低下すると共にやがて細胞の部分壊死ならびに細胞壊死が出現した。膵島細胞ではソマトスタチンを分泌するD細胞が多く見られた。一方、膵臓間質結合組織内に、少数個の脂質滴を保有する「脂質貯蔵細胞」が出現した。この細胞は、粗面小胞体の発達が良く、間質結合組織内に長い細胞質突起を出しているので、「線維芽細胞系」由来と判定される。また、この細胞の脂質滴の中に投与した金属元素がX線マイクロアナライザーによって証明されたことから、この細胞は生体内に進入した毒物(塩化亜鉛,塩化アルミニウムなど)をその脂質滴の中に一時貯蔵してその毒性を弱める働きがあると考えられる。さらに、「脂質貯蔵細胞」が大食細胞としばしば接触する像が認められたことから、これらの細胞は互いに情報を交換し、協力してそれらの毒物の処理に当たるものと思われる。これらのことから、「脂質貯蔵細胞」は広義の生体防御系に属する細胞であると考察した。
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