移植・培養縫線核ニュ-ロンに対する成長因子としての脳内ペプチドの形態学的検討

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03670026
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 上田 秀一 京都府立医科大学, 医学部, 助教授 (60150570)
• 研究分担者: 由利 和也 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (10220534) ; 河田 光博 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (60112512)
• キーワード: セロトニンニュ-ロン / 縫線核 / 再生 / 免疫組織化学法 / 移植 / 小脳 / 組織特異性 / 栄養因子

研究概要

胎生期ラットからの脳幹縫線核組織を成熟ラット小脳に移植し、セロトニンニュ-ロンが宿主組織に対してどのように再生していくのかを検索した。とくに小脳を選んだ理由としては、組織構築が比較的単純であり、かつ明瞭な層的構造を呈しているからである。言い換えると、小脳の各層には特定の神経伝達物質を持った線維が分布しており、各層に存在するペプチドとセロトニンニュ-ロンの再生との関係がより明確な形で解析されると予想されたからである。成熟ラットの脳室に5,6ーDHTを投与し、内在性のセロトニンニュ-ロン線維を化学的に変性したのちに、中脳と延髄の2つの領域からセロトニンニュ-ロンをそれぞれ小脳に移植した。中脳由来のセロトニンニュ-ロンは小脳内で正常にくらべはるかに豊富な突起の伸長(hyperinnervation)を示したのに対し、延髄由来のセロトニンニュ-ロンは正常とほぼ同じ分布パタ-ンを示した。この事実は、セロトニンニュ-ロン神経線維の宿主組織に対する伸長機構には組織特異的要因が強く関与しており、伸びだす神経線維とその標的部位には特定の親和性・非親和性結合機序の存在を示している。この特異的結合を決定する化学的物質のひとつとして、小脳皮質に豊富に分布しているペプチドがあげられ、このペプチドが神経線維の伸長に栄養因子として働いていることが推測された。また、胎生ラット縫線核を含む領域を成熟ラットの前眼房に移植し、移植片でのセロトニンニュ-ロンの突起の伸長程度を検討した。次年度は小脳各層におけるペプチドをはじめとする伝達物質とセロトニンニュ-ロン神経線維再生のより特異的な構造化学連関について検索を深めていく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Ihara,N.: "Transplantation of fetal mesencephalic and medullary rapha tissues into the cerebellum of denervated adult ratsーan immunohistochemical study." Brain Res.553. 39-43 (1991)
• [文献書誌] Ueda,S.: "Collateral sprouting of serotonergic fibers in the cingulate cortex and the septum following corticalーhippocampal lesions." Brain Res.556. 329-332 (1991)
• [文献書誌] Ueda,S.: "Immunohistochemical study of ne neuropeptideーY immunoreactivity in the paraventricular nucleus and the preoptic area of the rat following experimental lesions." Biomed.Res.12. 249-258 (1991)
• [文献書誌] Katoh,N.: "Targetーspecific inneration of autonomic and sensory nerve fibers in hairy fetal skin transplanted into the anterior eye chamber of adult rat." Cell Tissue Res.266. 259-263 (1991)
• [文献書誌] Matsumoto,Y.: "Morphological characterization and distribution of indoleamineーaccumulating cells in the rat retina." Acta Histochem.Cytochem.
• [文献書誌] Matsumoto,Y.: "Immunohistochemical and enzymehistochemical studies of peptidergic,aminergic and cholinergic innervation of the lacrimal gland of the monkey(Macaca fuscata)." J.Auto.Nerv.Syst.