1.細胞外マトリックス物質に分類されるプロテオグリカンが、中枢、末梢神経系のそれぞれに於て発生過程や成熟期に、異なる細胞に分布し、異なる細胞内分布を示すことを明らかにした。プロテオグリカンは、グリコサミノグリカン糖鎖がコアとなる蛋白に結合した糖蛋白である。神経組織には、多数のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンが分布していた。成熟ラットの脳において、コア蛋白に対する抗体により検出された1つのプロテオグリカンは、神経細胞にみれれ、グリアには認められなかった。小脳ではプルキンエ細胞、ゴルジ細胞や小脳核の神経細胞を免疫染色したが、顆粒細胞などは免疫陰性であり、1つのプロテオグリカンが細胞特異的に分布することが明かになった。このことはそれぞれの細胞が異なるプロテオグリカンを産生し含有する可能性を示唆すると思われる。 2.これとは異なるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンはグリア性で、グリアと神経細胞の両者が異なるプロテオグリカンを含有することも示された。 3.いずれのプロテオグリカンも細胞内分布が主に細胞膜であることから、プロテオグラカンがなんらかの細胞間相互作用に関与する可能性が考えられた。 4.神経性プロテオグリカンは胎仔ラットにおいては、中枢ならびに末梢神経系の神経線維の一部に存在した。しかし、成熟動物の神経線維にはみられないので、1つのプロテオグリカンの分布が、神経系の形成にともない変化する可能性がある。 5.神経性プロテオグリカンは、非神経組織の一部にも分布する可能性が示唆された。
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