1.神経系の生理活性物質としてのプロテオグリカンに、形態学の立場で着目した。脳のプロテオグリカンにはコア蛋白の分子量の違う6種があり、脳のプロテオグリカンは多様であった。 2.6種のコアの分布が日齢により異なり、脳の成長につれてプロテオグリカンの配合が異なり、組織形成にともない異なるプロテオグリカンが発現されることが明らかにされた。 3.脳のプロテオグリカンの糖鎖であるグリコサミノグリカンの電気泳動パターンは、コンドロイチン硫酸(4硫酸)の主に含んでいた。 4.コア蛋白のうちの1つを特異的に認識するモノクローン抗体を用いた免疫組織化学により、1つのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの分布を、中枢神経系において、経時的に追跡した。成熟ラットの小脳において抗体は、プルキンエ細胞、ゴルジ細胞や小脳核の神経細胞を免疫染色した。顆粒細胞などは免疫陰性であり、1つのプロテオグリカンが細胞特異的に分布することが明かになった。このことはそれぞれの細胞が異なるプロテオグリカンを産生し含有する可能性を示唆する。これと異なるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンはグリアに限局した。 5.これらのプロテオグリカンの細胞内分布がいずれも細胞膜であったので、これらのプロテオグリカンが異なる細胞同士のなんらかの相互作用に関わる可能性がある。その機能は現存では、不明である。 6.神経性のプロテオグリカンは、胎仔ラットにおいては、中枢ならびに末梢神経系の神経線維の一部に存在し、この局在は成熟脳では見られないので、1つのプロテオグリカンの分布が神経系の形成にともない変化する可能性が示唆された。
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