研究概要 |
今年度は、生後各齢ラットの脳及び脊髄をユビキチンに対する抗体御用いて免疫染色し、ユビキチン蛋白の発現に生後の各時期によって差があるかを検討した。その結果、日本神経科学学会(第15回大会、1991年,12月)に発表したように以下のことが明かとなった。 まず、ユビキチンに対する抗体で陽性となる細胞が、脳及び脊髄に存在した。ユビキチンに対するポリクロ-ナル抗体(SRL株式会社,高田博士作製)を用いた場合、細胞の核がユビキチン陽性である細胞が見られた。後に詳しく述べるように、この陽性核の出現には、生後の時期と部位による差が存在した。陽性線維の分布に関しては、発達過程の時期や部位による差を見い出すのが困難で、現在まだ実験と検索を続行している。これに対して、陽性核は、生後0日ですでに脊髄の運動神経細胞に見られ、その後運動神経細胞の核の染色性は弱まる。また、小脳プルキンエ細胞の核は、生後3日では、陰性であるが、生後1週では陽性となり、その後染色性が弱まる。大脳皮質運動領の細胞は、生後0日では陰性であるが、生後7日では、VとVI層の核が陽性であった。生後14日では、IIーV層の細胞の核が陽性であった。以上のように、生後発達の特定の時期にユビキチン陽性核が出現し、その時期は部位により異なっていることが明かとなった。運動領で陽性核が第V層に出現した時期は、皮質脊髄路の起始ニュ-ロンの限局が盛んに起こっている時期と一致しており、軸索側枝消去過程にユビキチンが増加していることが示唆された。またユビキチンが、活発な細胞活動をしている内分泌細胞核内に出現していることを見い出した。このことは、生後発達過程にある神経細胞核内に発見されたユビキチンの機能との共通性を示唆する興味深い知見である。
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