逆行性標識実験から、CST(皮質脊髄路)ニューロンの分布の範囲は生後2週ごろまでに成体での範囲に類似してくることがわかっている。また、順行性標識実験から明らかにされたことであるがmedialprefrontal cortexやoccipital cortexから脊髄はの投射は、生後3日及び7日では顕髄内に存在しているが、生後14日までに消失することが報告されている。今年度行ったカテプシンDによる免疫染色の結果から、カテプシンD陽性細胞がCST内に生後出現すること、また生後一過性にその数は増減し、生後2週以降は陽性細胞はCST内にほとんど認められなくなることがわかった。このことと、さきに述べたCSTニューロンの生後の分布変化とを併せて考えると、カテプシンD陽性細胞がCSTニューロンの側枝消失過程に関与している可能性が強く示唆された。また、今回、胎生20日から生後7日までの間にすでにカテプシンD陽性細胞がCST内およびその隣接部位に存在していることがわかった。このことから、CSTニューロンの軸索の脊髄への伸びだしと、一部の線維の消失が脊髄内で平行して起こっていることが示唆され。 ユビキチン蛋白陽性細胞や線維についても、去年度に引き続いて検討した。その結果、CSTの軸索消去の時期や部位に対応した陽性反応は認められず、ユビキチンが軸索消去過程に関与している可能性は少ないことがわかった。一方、脊髄神経節細胞や運動神経細胞の核がつよい陽性を示したことから、核内のユビキチンがこれらの神経細胞の機能に何等かの関与をしていることが示唆された。
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