1.松果体における神経分布の種差に関する研究の一環として、これまで報告の少ないコウモリ(キクガシラコウモリ)について追究し、下記の結果が得られた. (1)松果体茎を経て直接松果体主部へ到る脳由来のセロトニン神経含有線維の分布が確認された. (2)松果体には他の動物同様非常に豊富なノルアドレナリン(NA)線維が分布していた.ラット(1983発表)、イヌ(1983発表)ではこれらの線維は、松果体細胞由来のセロトニンの取り込み能を有しているが、コウモリのNA線維は、サル(1986発表)と同様、その能力を欠いていた. (3)豊富なアセチルコリンエステラ-ゼ(AChE)反応陽性線維の分布が松果体に証明された.これはその分布様式からNA線維(交感神経節後線維)と一致すると考えられる.NA線維、AChE線維共に脳実質へ進入することはなかった. (4)電顕的に松果体中の神経線維の大多数は、実質細胞の細胞間隙を走行していた. 2.ラットについて、松果体茎を中心として脳由来の神経線維分布について検索した. (1)ラット松果体茎には脳由来のセロトニンおよびNA含有神経線維が認められたが、これらは腺主部にまで進入することはなかった. (2)松果体茎に分布する神経線維は、茎起始部に向かうにつれて増加した. (3)上顎神経節切除ラットにおいて、松果体にCGRP含有神経線維の分布が確認された.これらは脳神経に由来すると考えられ、分布域は主腺内に限られていた.
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