パッチクランプ法及び蛍光顕微測光法を、腎尿細管培養細胞(A6細胞)に適用し、細胞外ATPにより活性化される細胞膜Ca流入路を研究した。細胞内Ca蛍光指示薬(fura-2)を前投与したA6細胞は、細胞外ATP(0.2-20uM)投与により、細胞内Caが2相性に増加した(ATP投与直後の一過性の増加とそれに引き続く持続的増加)。細胞外Caを除き、Caキレート剤EGTA(0.1mM)を細胞外に添加すると、ATP投与による細胞内Ca増加は単相となり、持続的増加は消失した。従って、細胞内Caの持続的増加は、細胞外から細胞内へのCa流入によると考えられる。単一A6細胞にwhole-cell clamp法を適用し、細胞外ATP投与により引き起こされるカチオン電流を測定した。この電流は、Ca及びMn透過性であり、過分極域においても活性を持ち、nicardipine(電位依存性Caチャンネル阻害薬)に非感受性であった。細胞内を5mMEGTAで潅流すると、細胞外ATP投与により活性化する内向きカチオン電流は完全に抑制された。A6細胞を、1ug/mlのpertussis toxin(百日咳毒素)で4時間以上前処置すると、細胞外0mMCaの条件で内向きカチオン電流の活性化の時間経過が遅くなった。結論:細胞外ATPは腎尿細管細胞において、CaおよびMn透過性のカチオンチャネルを活性化する。このチャネルは、細胞内Caにより活性化され、G蛋白質による調節を受けている。
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