初年度の研究成果として以下のことが判明した。 1) 接合尿細管細胞のカルシウム輸送は、管腔側膜においてナトリウム輸送との密接な相互作用が存在する。即ち、管腔側膜のナトリウム流入を阻害する操作ーナトリウムチャンネルブロッカ-やサイアサイド利尿薬などをくわえるとカルシウム輸送が増加する。これは細胞内カルシウムがサイアザイドにより減少する事実と輸送量が増加する事実を考えあわせると、カルシウムの基底側膜での汲み出しへの駆動力をナトリウムの濃度勾配が提供していることを示す。サイアザイド利尿薬の副作用である高カルシウム血症が接合尿細管でのこのようなカルシウム輸送による事を初めて明らかにした。2) 接合尿細管の管腔側膜には少なくとも数種類のチャンネル活動が観察された。この中には、本研究の目的とする非選択性陽イオンチャンネルも含まれているが、これまで腎臓の遠位尿細管系では検出困難であったナトリウムチャンネルなども見つかっている。3) 非選択性陽イオンチャンネルは比較的高濃度のカルシウムチャンネル阻害剤で抑制できることが判明した。ただし、これを確認するには、現在進行中のシングルチャンネルでの抑制が確認される必要がある。4) ヘンレの上行脚では、PTHやcyclic AMPにより、これまで活動していないか、膜の上には存在しないカルシウム流入路が活動を開始する。時間経過をみても長時間要するので、細胞内に存在するチャンネル蛋白が受容体刺激により、管腔側膜に埋め込まれるのではないかと推論される。5) ヘンレの上行脚の管腔側膜に受容体刺激により埋め込まれたカルシウムの流入路はイオンの選択性についての評価はまだ行なっていないが、比較的低濃度のカルシウムチャンネルブロッカ-により抑制される。電位依存性のカルシウムチャンネルとの鑑別を行なう必要がある。
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