前年度の研究成果により、腎皮質よりbeta型介在細胞を蛍光細胞分離装置を用いて単離、初代培養を行うことに成功した。また、この培養beta介在細胞では、prostaglandin E_2はcAMP産生に影響を及ぼさないことが明かとなった。そこで、本年度は、まず、細胞内情報伝達系でadenylate cyclase系と同様に重要な役割を果たす、細胞内Ca^<2+>濃度を指標としてprostaglandin E_2のbeta介在細胞への影響を検討した。細胞単離後3-5日の初代培養細胞を用いて、fura-2AMを細胞内に取りこませ、蛍光側光装置を用いて細胞内Ca^<2+>の変化を測定した。近年、beta受容体刺激剤により細胞内Ca^<2+>が上昇する場合も報告されていることから、まずisoproterenolの影響を検討したが、beta介在細胞においては有意の変化を示さなかった。ついで、prostaglandin E_2の効果を観察したが、prostaglandinE_2の10^<-5>Mで明かな細胞内Ca^<2+>の上昇を認めた。prostagalndin E_2がadenylate cyclaseの活性を変化させないこと、百日咳毒素によりリボシル化される蛋白が前年度の検討ではみられなかったことなどから、prostagalndin E_2はGq蛋白を介してphospholipase活性を上昇させ、細胞内Ca^<2+>濃度を変化させていると推測された。さらに、beta介在細胞の輸送体のG蛋白による調節を検討するため、初代培養細胞を用いてpatch clamp法によりClchannel活性を測定した。Clchannelは他の細胞でisoproterenolにより活性化されることが示されていることから、その影響を検討したが、同剤により用量依存性に活性化された。さらに、その効果はdibutyric cAMPとforskolinにより再現されadenylate cyclaseを介するものであることが示された。また、その活性化作用はG蛋白を不活性化するGDPbetaSの前処置により消失したことから、G蛋白を介するものであることが示された。以上の結果を総合し、beta介在細胞はbeta交換神経受容体を有し、Gs蛋白を介して機能が調節されることが明かとなった。
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